【チームの根vol.5】“破天荒副キャプテン” 早稲田大学HUMAN F.C. 阿部雅也(4年=渋谷幕張)

BeYonD 編集部

昨年苦くも、新関東リーグで入れ替え戦の末1部残留が叶わなかった早稲田大学 HUMAN F.C.(以下、HUMAN)。ただ今期の学内戦では再び早稲田の頂点に立ち、復活の狼煙を上げている。今回は、そんなチームを昨年一年間副キャプテンとして支え、周りからは“破天荒”などと揶揄された男に迫った。

img_0083

 

まずは、1,2年次を振り返ってもらった

チームから膝芸人とイジられるように、高校時代に両膝を怪我していたのもあり、大学ではサッカーを続けるつもりはなかったという。

 

「新歓のときに友達もいなくて、どこのサークルも勧誘を受けずに帰っちゃって、めちゃくちゃ乗り遅れてしまった。とにかくどっか参加しようと思って、馴染みのあるサッカーで所キャン(早稲田所沢キャンパス)だとサークル2つくらいしかないからとりあえずHUMANのイベントに参加したのがきっかけかな」
そんな新入生特有の焦りで入ったサークルだったが、レベルの高さに魅せられたという。

 

「俺らが1年生の時の3年生がめちゃくちゃ上手くて、こういう人たちとサッカーしたいって思い始めてドンドン参加して、気がついたら練習、試合、イベントはほとんど参加するようになってた(笑)」
2年生でも特に試合に出られる、という訳ではなかったようだが、常にサークルに参加していたようだ。

 

夏になり、自分たちの代から幹部を選ぶ。彼は使命感に似たものを持っていたようだ。

 

「自分たちが幹部になるってことで、それなりに参加してたし、やっぱり分かってる人がならなきゃ、大きい組織だから回らないし、どっかの役にはつくだろうし、つかなきゃなとは思ってた。最初は副幹事長のつもりだったんだけど、副キャプテン候補だったやつが1人辞退して。まぁ最後の1年だし、出られない人の気持ちも分かるってことで、ちゃんとサッカーしようと思って副キャプテンになった」

img_0084

 

 

そうして新関東リーグを終え、本格的に幹部学年としての一年が始まった。

「特にチームとして目標があった訳ではないんだけど、二個上の代が見せてくれた日本一っていうのを知ってるのが自分たちだけになって。その景色を後輩に見せてあげたいし、また見たいっていう思いが強かったかな」

 

また個人的には、先ほどの彼の発言のように「上手い人だけじゃなくて、出られない自分がそういう立場になることは、チームとしても大事だと思った。それに加えて、普段ふざけてる俺がいい雰囲気を作れたらって思ってた」
と、自分なりの副キャプテン像を描いていたようだ。

 

ただ、始まってみると“試合に出られないもどかしさ”と言うものを感じていたようだ。

 

HUMANは学内戦、新関東カップとどちらも惜しくも準優勝という結果だった。ただ彼の出場はなかったようだ。
「副キャプテンとして出来ることが少なくて。サッカーでもあんまりいいことも言えないし、プレーで見せるってこともできないし。結局は雰囲気を作るっていう所に終始しちゃって、最初は無力感とかギャップを感じたかなぁ。なんで副キャプテンやったんだろとかも思ってた

 

当初は強豪の中でも慣れない立ち位置に悩まされていたようだ。
特に学内戦、カップ戦と勝ちきれない時期と慣れない時期、そして試合に出られないことが重なり、副キャプテンという重責から普段のキャラクターを出しきれないことも多かったようだ。

 

夏を迎えてマガハイ。HUMANは死のグループを2勝1敗で終えるも、混戦のグループリーグを得失点差で上位トーナメントに進むことが出来なかった。しかしグループリーグでは結果的に優勝することになったフースバルに唯一黒星をつけるなど、収穫の少ない大会ではなかったようだ。

 

そして迎えた集大成、新関東リーグ。
先のアットホームカップでは良くない中でも勝ちきれた。その調子を良くない形で引きずってしまったようだ。

 

リーグが開幕しヒューマンは3連敗を喫した。
「チーム状況はめちゃくちゃ悪かったかな。キャプテンともう1人副キャプテンも両サイドハーフで言い分もあるし。それを見てることしか出来ずに。自分はディフェンスで、結局失点は自分たちの責任だから。本当にただ見ることしか出来なくて、地獄だったね(笑)」

 

後のなくなった4節から、怒涛の3連勝を果たすも阿部はスタメンを外されている。
「もう3連敗してやるしかないってなって、やっぱりどこかいじらなきゃ行けないからしょうがない。けど自分が外れた試合から連勝して嬉しいけどなんとも言えない気持ちだったかな。でもそこで腐っちゃおしまいだし、いつかは必要なときが来ると思ったし、チームのためにもならないしね」

 

最終節でライバル稲穂と当たった。この年3回目の対戦で、今までで1番の戦いが出来たようだった。しかし、「引き分けでも大丈夫ってのがチラついたかな」と語ったように、失点を喫してしまい、入れ替え戦に回る。

 

そして、入れ替え戦では生田蹴友会とのPK戦にまでもつれた激戦の末敗れ、悔しい形で引退となってしまった。

 

 

心苦しい質問だったが、副キャプテンとして残った後悔を聞いて見た。

「まずはもっとサッカーと向き合えばよかったって所かな。副キャプテンとして、向き合えてなかった訳ではないんだけど、少しでも”出なくても”って思ってた時点で逃げちゃってたのかなと思う」と自分の立場を理解しながらもそれ以上の働きをできなかったことに苦さを感じているようだ。

 

また「雰囲気作りって部分を見せることはできたし、慣れてきたらふざけていつものキャラもだせたし、後輩との関係もよくて頼られていたと思う。ただ、同期間ってところで。自分の役割外の仕事を抱え込みすぎたかな。もっとみんなに任せてよかったかなって思う。自分でやっちゃったほうが早いとかも思ったんだけど、もっと頼りにしてよかったなって思った。でも各々が仕事を抱えてるのも分かってたし、なかなかできなかった」と仲間を頼りきれなかったことに後悔を感じさせた。

 

HUMANのマネージャーは基本的にブログを書く役職しかなかったようだ。ただ、彼らの代は例年より人数も多く、協力的で、自分たちも何かしたいということでマネージャーも役職を持ったようだ。そんなマネージャーとの関係性を聞いてみた。
「負け続けて泣いちゃってるときとか、悩んでるときとかは見てあげたり、話聞いてあげるくらいしか出来なくて。逆に感謝のほうが多いかな。一個上の人の言葉ですごい心に残ってる言葉があって、マネージャーが声かけてくれたときに『頑張ってじゃなくて頑張ろうだろ』って言葉で。それを聞いてから俺もすごい大事にしてて、それからマネージャーもより一緒に戦ってくれたし、仕事とかもすごいやってくれて、本当に感謝してる。その当時はいろいろ思うこともあったけどね(笑)」と照れ隠ししながらも感謝を語ってくれた。

img_0085

 

後輩へのメッセージを聞いた。
「後悔をしてほしくない。っていうのはあるけれど、どんな形であれ後悔ってのは残ってしまうと思う。そのなかで一番後悔が残らないのが結果を残すっていう部分なのかなとは思う。けどまず思うのはみんなでやりきってほしいってのが一番かな。代ごとに色ってあるからそこを大切に、型にはまらずやってほしいかな。でもまわってるみたいだし、強いから大丈夫だと思う。あとは、幹部代っていうのに縛られすぎないでほしいかな。」

 

それは自分の経験を持って言ったことかもしれない。
自分を出し切れてないんじゃなかったかという質問に対して彼はこんなことを語っていた。
「確かに最初のころは幹部だからって自分を出し切れないところがあったかもしれない。けど下級生を楽しませたりするにはまずは自分が楽しんでないとだめだなって思った。だから自分を出し切れなかったってことはなかったし、充実してたかな。おかげでキチガイってよばれてたし(笑)」

 

幹部就任当初は、自分が定めた目標も難しく、幹部という責任感で中々自分を出しきれなかった。結果が付いてこず、難しい一年を過ごしてきた。ただ自分が楽しむということを忘れず、周りを巻き込むことで自然と仲間が付いてきてくれたのかもしれない。仲間とともに苦しみ、ともに戦うことで自分なりの副キャプテン像を築けたのかもしれない。

 

仕事や役職に縛られながらも“サッカーサークル”という根本を忘れず、楽しみ、戦い続けた。自分で考え動き、組織を動かすことは並大抵のことではないが、たくさんのことを経験したおかげで、就職活動では話が尽きなかったようだ。

 

破天荒副キャプテンをみた今のHUMANが自分たちの戦い方で再び頂点に輝く姿を心待ちにしている。

早稲田大学 HUMAN F.C.のチームページ

Written by

BeYonD 編集部

beyond

BeYonD編集部です。

Keywords

Recommend

コラム 2023.07.20

【マネの想いvol.8】元マネージャー長から現役マネージャーへ💌

こんにちは!BeYonD編集部です! いよいよ夏休みスタート!☀️🌻新入生を迎えてチームの体制も整い、大学の授業も休みとなり、サークル漬けの日々になる人も多いのではないでしょうか。 &nb…

read more 木村彩歌
コラム 2019.01.08

【就活記事 vol.2】早稲田大学HUMAN F.C. 藤林拓哉 「自分の決定を正解に変えていく覚悟作り」が就活

時にとにかく明るい藤林と称され、持ち前の明るさとカリスマ性で2017年度の早稲田大学HUMAN F.C代表としてチームをまとめ上げた藤林拓哉。 1部リーグ昇格こそできなかったものの、学内戦優勝や新関…

read more 高橋佑輔
コラム 2022.01.17

【株式会社フジキカイ】BeYonDの新スポンサー様を訪問させていただきました!

    みなさんこんにちは!BeYonD編集部です!   今回、2021年12月より新たにBeYonDプロジェクトをスポンサードしていただいている…

read more BeYonD 編集部
コラム 2021.09.19

【特別企画】Jユース出身の私たちが大学サッカーサークルを選んだ理由[前編]

今回の記事は、高校時代にはJユースに所属していたが、大学ではサッカーサークルを選んだ早稲田大学HUMANFC(以下:ヒューマン)の3選手に迫ります。 大野友太郎(4年=ロアッソ熊本ユース)、鈴木…

read more 大田智輝
コラム 2017.10.19

【新関東リーグ2部フォトギャラリー】第2節・中央大学サッカー同好会vs早稲田大学HUMAN F.C

中央大学サッカー同好会 この試合柔らかいタッチで相手を翻弄。タメを作れる選手だ。後半には見事なボレーシュートを見せた鯖坂(1年=多摩大目黒)。 身長180センチオーバーから繰り…

read more BeYonD 編集部
コラム 2016.11.15

【BMOM9】 MF大石元気(2年)がチームを残留に導く決勝点

多摩の暴れ馬   中央大学フースバルクラブは第6節に、明治大学体同連サッカー部と対戦し、1-0で勝利した。5位と低迷していたチームを救ったのが、左SH38番の大石 元気(2年=藤枝東…

read more BeYonD 編集部
コラム 2017.10.04

【イケメン特集vol.2】モダン女子が求める正統派、スタイル抜群イケメン

こんにちは!     8月9月と暑かった夏が嘘のように 最近は寒くなってきました!     9月にはサッカーサークル一大イ…

read more BeYonD 編集部
コラム 2023.05.08

【新歓記事vol.10】元幹事長に聞いてみました!新歓の極意!

こんにちは!BeYonD編集部です! 4月も終わりに差し掛かり、各サークル新歓活動も盛り上がってきているのではないでしょうか。ということで今回の記事は新歓をする側の2,3年生に向けた内容になって…

read more 野口日向
コラム 2025.05.09

【新入生必見】大学生活スタートダッシュ!🏃バイト選びのリアル

こんにちは👶🏻🧡 BeYonD編集部です! 「バイトってどう選べばいいの?」「みんなどれくらい働いているの?」 そんな悩みを抱えている新入生に向けて、今回はサッカーサークルに所属していた4人の先輩…

read more 山木陽菜
コラム 2023.02.26

【新歓記事vol.1】新入生必見‼️慶應義塾大学サッカーサークルを比較してみました!!

慶應義塾大学の新入生必見!サッカーサークルを比較してみました!! だんだん寒さが遠退いて暖かくなり、春を感じる季節になってきましたね。「春」といえば新学期。進級し、新入生が入学してサークル選びを始め…

read more 中嶋 快

-PICKUP CIRCLE-