【チームの根vol.5】“破天荒副キャプテン” 早稲田大学HUMAN F.C. 阿部雅也(4年=渋谷幕張)
BeYonD 編集部昨年苦くも、新関東リーグで入れ替え戦の末1部残留が叶わなかった早稲田大学 HUMAN F.C.(以下、HUMAN)。ただ今期の学内戦では再び早稲田の頂点に立ち、復活の狼煙を上げている。今回は、そんなチームを昨年一年間副キャプテンとして支え、周りからは“破天荒”などと揶揄された男に迫った。
まずは、1,2年次を振り返ってもらった
チームから膝芸人とイジられるように、高校時代に両膝を怪我していたのもあり、大学ではサッカーを続けるつもりはなかったという。
「新歓のときに友達もいなくて、どこのサークルも勧誘を受けずに帰っちゃって、めちゃくちゃ乗り遅れてしまった。とにかくどっか参加しようと思って、馴染みのあるサッカーで所キャン(早稲田所沢キャンパス)だとサークル2つくらいしかないからとりあえずHUMANのイベントに参加したのがきっかけかな」
そんな新入生特有の焦りで入ったサークルだったが、レベルの高さに魅せられたという。
「俺らが1年生の時の3年生がめちゃくちゃ上手くて、こういう人たちとサッカーしたいって思い始めてドンドン参加して、気がついたら練習、試合、イベントはほとんど参加するようになってた(笑)」
2年生でも特に試合に出られる、という訳ではなかったようだが、常にサークルに参加していたようだ。
夏になり、自分たちの代から幹部を選ぶ。彼は使命感に似たものを持っていたようだ。
「自分たちが幹部になるってことで、それなりに参加してたし、やっぱり分かってる人がならなきゃ、大きい組織だから回らないし、どっかの役にはつくだろうし、つかなきゃなとは思ってた。最初は副幹事長のつもりだったんだけど、副キャプテン候補だったやつが1人辞退して。まぁ最後の1年だし、出られない人の気持ちも分かるってことで、ちゃんとサッカーしようと思って副キャプテンになった」
そうして新関東リーグを終え、本格的に幹部学年としての一年が始まった。
「特にチームとして目標があった訳ではないんだけど、二個上の代が見せてくれた日本一っていうのを知ってるのが自分たちだけになって。その景色を後輩に見せてあげたいし、また見たいっていう思いが強かったかな」
また個人的には、先ほどの彼の発言のように「上手い人だけじゃなくて、出られない自分がそういう立場になることは、チームとしても大事だと思った。それに加えて、普段ふざけてる俺がいい雰囲気を作れたらって思ってた」
と、自分なりの副キャプテン像を描いていたようだ。
ただ、始まってみると“試合に出られないもどかしさ”と言うものを感じていたようだ。
HUMANは学内戦、新関東カップとどちらも惜しくも準優勝という結果だった。ただ彼の出場はなかったようだ。
「副キャプテンとして出来ることが少なくて。サッカーでもあんまりいいことも言えないし、プレーで見せるってこともできないし。結局は雰囲気を作るっていう所に終始しちゃって、最初は無力感とかギャップを感じたかなぁ。なんで副キャプテンやったんだろとかも思ってた」
当初は強豪の中でも慣れない立ち位置に悩まされていたようだ。
特に学内戦、カップ戦と勝ちきれない時期と慣れない時期、そして試合に出られないことが重なり、副キャプテンという重責から普段のキャラクターを出しきれないことも多かったようだ。
夏を迎えてマガハイ。HUMANは死のグループを2勝1敗で終えるも、混戦のグループリーグを得失点差で上位トーナメントに進むことが出来なかった。しかしグループリーグでは結果的に優勝することになったフースバルに唯一黒星をつけるなど、収穫の少ない大会ではなかったようだ。
そして迎えた集大成、新関東リーグ。
先のアットホームカップでは良くない中でも勝ちきれた。その調子を良くない形で引きずってしまったようだ。
リーグが開幕しヒューマンは3連敗を喫した。
「チーム状況はめちゃくちゃ悪かったかな。キャプテンともう1人副キャプテンも両サイドハーフで言い分もあるし。それを見てることしか出来ずに。自分はディフェンスで、結局失点は自分たちの責任だから。本当にただ見ることしか出来なくて、地獄だったね(笑)」
後のなくなった4節から、怒涛の3連勝を果たすも阿部はスタメンを外されている。
「もう3連敗してやるしかないってなって、やっぱりどこかいじらなきゃ行けないからしょうがない。けど自分が外れた試合から連勝して嬉しいけどなんとも言えない気持ちだったかな。でもそこで腐っちゃおしまいだし、いつかは必要なときが来ると思ったし、チームのためにもならないしね」
最終節でライバル稲穂と当たった。この年3回目の対戦で、今までで1番の戦いが出来たようだった。しかし、「引き分けでも大丈夫ってのがチラついたかな」と語ったように、失点を喫してしまい、入れ替え戦に回る。
そして、入れ替え戦では生田蹴友会とのPK戦にまでもつれた激戦の末敗れ、悔しい形で引退となってしまった。
心苦しい質問だったが、副キャプテンとして残った後悔を聞いて見た。
「まずはもっとサッカーと向き合えばよかったって所かな。副キャプテンとして、向き合えてなかった訳ではないんだけど、少しでも”出なくても”って思ってた時点で逃げちゃってたのかなと思う」と自分の立場を理解しながらもそれ以上の働きをできなかったことに苦さを感じているようだ。
また「雰囲気作りって部分を見せることはできたし、慣れてきたらふざけていつものキャラもだせたし、後輩との関係もよくて頼られていたと思う。ただ、同期間ってところで。自分の役割外の仕事を抱え込みすぎたかな。もっとみんなに任せてよかったかなって思う。自分でやっちゃったほうが早いとかも思ったんだけど、もっと頼りにしてよかったなって思った。でも各々が仕事を抱えてるのも分かってたし、なかなかできなかった」と仲間を頼りきれなかったことに後悔を感じさせた。
HUMANのマネージャーは基本的にブログを書く役職しかなかったようだ。ただ、彼らの代は例年より人数も多く、協力的で、自分たちも何かしたいということでマネージャーも役職を持ったようだ。そんなマネージャーとの関係性を聞いてみた。
「負け続けて泣いちゃってるときとか、悩んでるときとかは見てあげたり、話聞いてあげるくらいしか出来なくて。逆に感謝のほうが多いかな。一個上の人の言葉ですごい心に残ってる言葉があって、マネージャーが声かけてくれたときに『頑張ってじゃなくて頑張ろうだろ』って言葉で。それを聞いてから俺もすごい大事にしてて、それからマネージャーもより一緒に戦ってくれたし、仕事とかもすごいやってくれて、本当に感謝してる。その当時はいろいろ思うこともあったけどね(笑)」と照れ隠ししながらも感謝を語ってくれた。
後輩へのメッセージを聞いた。
「後悔をしてほしくない。っていうのはあるけれど、どんな形であれ後悔ってのは残ってしまうと思う。そのなかで一番後悔が残らないのが結果を残すっていう部分なのかなとは思う。けどまず思うのはみんなでやりきってほしいってのが一番かな。代ごとに色ってあるからそこを大切に、型にはまらずやってほしいかな。でもまわってるみたいだし、強いから大丈夫だと思う。あとは、幹部代っていうのに縛られすぎないでほしいかな。」
それは自分の経験を持って言ったことかもしれない。
自分を出し切れてないんじゃなかったかという質問に対して彼はこんなことを語っていた。
「確かに最初のころは幹部だからって自分を出し切れないところがあったかもしれない。けど下級生を楽しませたりするにはまずは自分が楽しんでないとだめだなって思った。だから自分を出し切れなかったってことはなかったし、充実してたかな。おかげでキチガイってよばれてたし(笑)」
幹部就任当初は、自分が定めた目標も難しく、幹部という責任感で中々自分を出しきれなかった。結果が付いてこず、難しい一年を過ごしてきた。ただ自分が楽しむということを忘れず、周りを巻き込むことで自然と仲間が付いてきてくれたのかもしれない。仲間とともに苦しみ、ともに戦うことで自分なりの副キャプテン像を築けたのかもしれない。
仕事や役職に縛られながらも“サッカーサークル”という根本を忘れず、楽しみ、戦い続けた。自分で考え動き、組織を動かすことは並大抵のことではないが、たくさんのことを経験したおかげで、就職活動では話が尽きなかったようだ。
破天荒副キャプテンをみた今のHUMANが自分たちの戦い方で再び頂点に輝く姿を心待ちにしている。
Written by
BeYonD 編集部
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