【チームの根vol.1】 “責任と誇り” 慶応キッカーズ58th 宮武勇旗 (3年=サレジオ学院)

BeYonD 編集部

サッカーサークルはなにも試合に出ている花形のプレイヤーや、チームの華としてプレイヤーを支えているマネージャーだけではない。彼らがいなくては一サークルとして成り立たない。そんな“根っこ”のような存在がいるのだ。今回はその根っこに焦点を当ててみる。

 

慶応キッカーズ58th      宮武 勇旗 (3年=サレジオ学院)

img_8963

まずはキッカーズ入団から1,2年時の自分を振り返ってもらった。

なんと彼は高校三年の頃からキッカーズを知っていたという。

「自分が高校生の時に今のアットホームカップで優勝していたので」

しかし、「大学に入ったときは、そもそもサッカーを一度やめようとしていた。新しいスポーツを始めて体育会にも興味があって」

ただ経験のある人もいるだろう。

「けれど少しだけサッカーと離れたときに、やっぱり違うかなぁと、やっぱりサッカーかなぁと思って。それで一度キッカーズの先輩にはすいませんという話はさせてもらっていたのですが急遽行かせてもらって、新歓合宿に参加してそのまま入部しました」と、すんなりキッカーズ、そしてサッカーを選んだわけではないことを明かしてくれた。

キッカーズに入部を決めるも、周りとのギャップに1,2年時は苦しんだこともあるという。

「周りのレベルがすごく高かった。中学高校のときとは背景が全く違う選手ばかりで、そこですごい苦しんだ」と答えた。試合や練習で自分が持つと、ミスすると流れが止まってしまう。このレベルの中に自分はいていいのか、うまい人に合わせられない自分が嫌だと悩み苦しみ「試合に出れる出れないとかではなく、キッカーズに乗り気でない時期が1、2年の時は何度かあった」とまで明かしてくれた。

ただ最後には“同期”の存在を強く訴えていた。「同期と過ごす時間がすごく楽しく、気がついたら友達もキッカーズばかりになっていました(笑)」と笑顔で語ってくれた。こうして2年生の夏を迎えた彼は、“主務”に任命されるのであった。

 

そして、一つ上の代が引退し、自分たちの代となった。

「一個上の代は稲穂フェスタも獲って、うまい選手もたくさんいた。そんな人たちが引退して、前線はほとんどスタメンがいなくなってしまった」。その状況の中で幹部4人(代表・副代表×2・主務)を中心にスタートを切る。

不安とともにスタートを切った自分たちの代。キッカーズは三月の合宿で青山大学理工サッカー部、五月の稲穂フェスタで明治体同連、稲穂キッカーズを破った。「春の最初の時期に、(新関東リーグ)一部相手にもなんとかやれる、自分たちのサッカーが通用したってことで希望は抱けた。ただ…」

続く新関東カップではベスト8、アットホームカップではグループリーグ敗退。そして彼らが最も重きを置くという新関東リーグでは強豪ひしめいた二部Aブロックで首位に勝ち点2及ばず三位という結果に終わってしまった。「ある程度結果が残っているときのサッカーが続けられなかった。ベストなサッカーをすれば勝てない相手ではなかったけれど、結局個人頼みのサッカーになってしまって、全員でやるサッカーの難しさを痛感した」と、最後までいい時を続けられず終えてしまったことへの強い後悔を感じさせた。

 

続いて主務という立場について語ってもらった。

「自分は試合に出られる立場ではなかったけど主務という立場になって、サッカーに関して口出ししなきゃいけない。でも試合に出ていないくせにと思われて、なにか言われたらっていう怖さもあって強く言えなかった」彼はジレンマの中で常に戦っていた。「新関東で集まるときも周りはキャプテンとか試合に出ているやつら。その中にポツンと自分が一人いたりして自分がキッカーズを語っていいのかっていうのもあって、試合に出てない幹部って立場は難しかった」

また「Aチームに入りたいって思ったときに、練習にならだれよりも行ったし、マネージャーになったら俺もAチームに入れるのかなぁ。みたいな変なことを何度も考えるレベルにプレイヤーという縛りはきつかった」と苦悩とともに戦っていたことを明かしてくれた。

 

もしかしたら一年間を通じてつらい思いのほうが多かったかもしれない。

しかし彼は「上の主務をみると、代々しっかりした人がなっていた。そこに入るとなって不安はあったけど、運営を一人でやるからには『キッカーズの運営は俺一人で十分。あいつがいれば運営は大丈夫だ』ってことを常に意識したし、試合に出ているヤツに運営のことは意識させない、誰にも口出しはさせないようにした」

また「もともとキッカーズは高校時代から知っていることもあって、一サークルというより憧れのチームで、うまい人しかいなくて、強いチームで・・・。そんなチームに入って良いのかってところはあったけれどなんとか二年間続けてきて、最後の一年間を同期からの推薦もあって幹部として任されることになって、慶応キッカーズ、そして同期に恩返しをしたかった。だからこの一年間はこのサークルを守りたいっていうのが常にあった」

さらに「主務っていう仕事を通して自分の居場所を確認できたというのもあるけど、なによりもキッカーズにいたかったから」と、主務は彼にとって仕事以上の何かであることを感じさせた。

 

主務をやれてよかったかと投げかけると「間違いなく」と力強く答えてくれた。具体的なエピソードを求めると引退時に後輩からもらったアルバムを挙げてくれた。

「主務の仕事はあまり形に残るものがない。けどそのアルバムにはたくさんの後輩からの感謝の言葉があった。普段あまり絡むことのない一年生から試合に出ててとがってる感じの二プレとかから『宮武さんのおかげで』とか、一つ一つの仕事に対しての感謝が並んでいるのを見たときはやってよかったなと感じた」

 

img_8961

58thの慶応キッカーズを語るうえでは避けては通れない話がある。同じく58thのキッカーズの代表粂田と宮武は中高時代の先輩後輩にあたるのだ。代表と主務という最も密接な関係の中で一つ上の先輩との関わりを語ってもらった。

「うちの中高は別にサッカーの強豪校ってわけではないんだけれど、その中で10番をつけててキャプテンで、試合中とかもよく怒っているのを目にしてて、まぁ、その、怖かった(笑)それで大学に入って、キッカーズの新歓合宿に行ったら粂田さんがいて・・というかいらっしゃって」と当時の上下関係を連想させる言い直しを交えながら、そのことはいまだに印象的だと教えてくれた。当時はやはりやりづらさを感じていたようだ。言いたいことも言いづらく、やりたいこともやりづらかったようだ。ただ三年になって最も近い関係性になった。「合宿の代表者会議も二人で行くし、そのあと二人でお風呂に入ってるときとか、ふと我に返ると俺すごいことしてるな、って思うこともあった。一緒にスノボとか言ったこととかも高校の同期に話をするとビビられる(笑)でも三年間、特に最後の一年間は近い関係になって、いまでも変わらないこともあるけど先輩後輩以上の関係にはなれたかなと語り、

「自分以上に代表のほうが気を使ってくれていた。俺がのびのびやれてないんじゃないかとかをすごい考えてくれてて感謝をしているし、あの人がいるからやらなきゃっていう使命感で仕事ができるところもあった」と、感謝の気持ちとそれに近いものを述べていた。

 

 

最後に“宮武にとって主務とは?”を聞いてみた。

「ありきたりかもしれないけど“責任と誇り”かな。自分の小さなミスがチームの金銭面やその他の面で大きなマイナスになってしまう。だから常にミスはしないようにしたし確認もした。それを一年間通して自分なりの主務を勤め上げられた。だからこそ誇りもある」

そう語る彼の目に曇りはなかった。

後輩の主務に伝えたいこととして強調していたのが“チームみんなのこと”だ。

「チーム全員を見てあげること。じゃないと離れて行ってしまう。最初はたくさん人数が入ってくるけどどんどん少なくなってしまう。多分主務としての一番の成功は一年生が入った人数のまま引退していくこと。離れて行ってしまうっていうのはサークル側の問題で、主務の責任でもある。サッカーに繋がるために、サッカー以外の楽しい面、雰囲気を伝えて、サッカーまでの準備をチーム全員のことを考えながらやることかな」

「常にプレイヤー、マネージャー、チームみんなの顔を思い浮かべて仕事をすること。こいつらのためになにができるか、なにをしてやれるかってことを考えればきっと自然にやろうと思える」

きっとこうして彼も長い一年間、一人でチームを支えていたのだろう。自分の役割に徹し、常にチームを最優先に、チームみんなと戦い続けたのだろう。59thの主務は久々にスタメンを張る選手だという。「自分が見れなかったピッチの中からもチームを見れる」

そう期待を寄せた。彼の背中を見て、彼の意志を継いだ主務を中心に慶應キッカーズはまた一段と強いチームになって、今シーズンを戦い抜くだろう。

img_8962

Written by

BeYonD 編集部

beyond

BeYonD編集部です。

Keywords

Recommend

コラム 2022.02.07

[JAPAN PACK 2022]包装業界の祭典が2/15に開幕!!

いったい何の記事かと思われた皆さんすみません(笑)! 今年度より新スポンサーになって頂いた株式会社フジキカイ様も参加される包装業界のイベントについてのお知らせになります! 2022年2月15〜…

read more BeYonD 編集部
コラム 2021.12.21

サッカーサークル界に新リーグ創設!立ち上げのきっかけや現状、将来設計に迫る!

みなさんこんにちは! 今年度から新関東リーグに所属するチームで新しいリーグが創設されたのは御存じでしょうか? その名もSpielen Rookie Leagueです! 創設1年目の今年は…

read more BeYonD 編集部
コラム 2022.02.19

BeYonD HPにある同好会情報を更新しませんか!?

こんばんは!BeYonD編集部です! サッカーサークル・同好会に所属している皆様へのお知らせです! この度BeYonD HPにある同好会情報を更新しようと思い、皆様にご協力頂けたらなと考えています…

read more BeYonD 編集部
コラム 2017.09.15

【BMOM73】マガジン杯2017・王者稲穂を率いた”肩幅オバケ”闘将末永(3年=都立駒場)

早稲田稲穂キッカーズは2017年の夏を最高の形で締めくくった。 9/8~12の5日間、マガジンカップ2017が開催され、昨年度準優勝の早稲田大学稲穂キッカーズ(以下:稲穂)は明治大学体同連サッカー部…

read more BeYonD 編集部
コラム 2017.05.02

【BMOM37】小池建(3年=幕張総合)強烈な左足で1G1Aの活躍

【新関東カップ2017 1回戦】K9 football park ICHIHARA 早稲田大学CRUYFF 0-4 明治大学BeeVoo MF小池建(3年=幕張総合) 新関東カッ…

read more BeYonD 編集部
コラム 2023.06.23

【注目の1年生紹介記事vol.4】早稲田大学FC.GUSTAと中央大学体同連フースバルクラブの注目選手を紹介!

BeYonD編集部です! 今回は一年生紹介記事最終弾! これまで数々の新入生を紹介してきましたが、今回紹介する2名もこれからサークル界を牽引していく存在です。 技術派集団早稲田大学F…

read more 土屋茜音
コラム 2020.07.28

【ユニフォーム特集 nike編】サッカーユニフォームオーダー作成!かっこいいユニフォームどうやって作る?

皆さん、サッカーユニフォームのオーダー作成の際に、かっこいいユニフォームをどうやって作るのか興味ありませんか? ユニフォームのオーダー作成ってメーカーやデザイン、ロゴの種類や値段などなど、、悩むポイ…

read more BeYonD 編集部
コラム 2019.04.23

【サークル × 体育会イベント】早稲田稲穂キッカーズキャプテン 中島剣士郎『実際にはサッカーに熱中する同じ大学生』

3/27(水)に大学サッカー界新たな試みとして開催された「サークル × 体育会」イベント。この日はサークルvs体育会でバチバチの試合が繰り広げられた後に、交流会が開催され、お互いのイメージや価値観を交…

read more 高橋佑輔
コラム 2017.11.30

【BeYonD協賛イベント】ドルトムント観戦ツアーはいったい誰の手に!?豪華賞品をかけたHIS主催フットサル大会!!

2017年10月28日(土)MIFA Football Palkにて、私たちBeYonDが協賛させていただいたイベントが行われた。その名も… ~本場の海外サッカーを観に行こう~ HIS主催フットサ…

read more BeYonD 編集部
コラム 2020.09.02

[特別企画]夢のコラボ !プレからの想い×イケメン特集

みなさんお待たせしました! イケメン特集です!! そして、なんと!!! 約3年ぶりの復活!プレからの想いのコーナーとコラボしちゃいます。 今回は、早稲田大学理工サッカー部の3年出原蒼己くんにイ…

read more BeYonD 編集部

-PICKUP CIRCLE-